「かがりはずし展」は、陶芸の世界の〝窯開き〟に倣って、仕上がったばかりの刺繍作品をお客様に直にご覧頂いて、お買い求め頂く新作発表の場です。お蔭様で今年、昭和五十五年の第一回展より二十一回目を迎えるはこびとなりました。
日本刺繍の魅力を多くの方々と分かち合うことを願い、日本の伝統文様や四季の自然から想いを得た図柄の染地繍帯を中心に制作して参りました。今回は、バラエティー豊かな、そしてお気軽にお使いいただけますシンプルな図柄も多く取り入れています。
また、「地色を変えて…」「模様を足して…」等のご希望をお一人お一人、お引き合いさせて頂いておりますので、ご遠慮なくお声掛け下さい。
能楽の「縫箔」(ぬいはく)とは、刺繍(ししゅう)と金銀の摺箔(すりはく)の技法を併用し制作される装束を言います。この度、(重要無形文化財総合指定)能楽シテ方観世流梅若六郎家当主、五十六世梅若六郎師監修による縫箔が完成しました。もとは他家に伝わる江戸時代中期の縫箔を六郎師が気に入られ、刺繍を紅会『くれないかい』工房が担当し新しく制作したものです。刺繍のみに3年を費やし、2008年夏に仕立て上がりました。六郎家よりお借りして本部工房でのみ展示致します。
有職柄の箔地袋帯や、箔置や染め分けを取り入れたおしゃれ帯などの他、小物類を含めて約六十点を出品します。
あるがままに生きる草木たちは、自明の理に生かされているから私達を癒し浄化してくれるのでしょうか。私達は四季折節に草木たちの見せてくれる生命の輝きを針に托します。感動や願いが伝統の技によって作品となる、この喜びを皆様にお届けできますことを本当に有り難く思います。
本部工房作品販売会・かがりはずし展をご案内申しあげます。出品作品は、名古屋帯や袋帯仕立ての染地繍帯三十五点・フォ―マルな箔地繍袋帯十五点・屏風他を予定しています。染地繍帯は季節の詩やモダンなデザインなど、おしゃれに楽しく装っていただけますよう工夫しています。小紋や和装小物も準備いたします。
かがりはずし展は、今年で十七回目を迎えますが、この二十年間、呉服業界は大きく様変りいたしました。着物離れから多くの問屋の廃業、それに伴う熟練技術者の転職等々、その波紋はまだ広がっています。紅会『くれないかい』ではつくる私達から皆様へ、日本の文化だからこその喜びの循環を願って制作しています。 ご来場をお待ち申しあげます。